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2025年5月21日
欧州・アフリカ
旭化成・Nobian・フルヤ金属・Mastermelt、4社共同で食塩電解用セル・電極の金属リサイクルに関する実証開始

旭化成株式会社は、オランダの化学企業Nobian Industrial Chemicals B.V.、日本の貴金属メーカーである株式会社フルヤ金属、英国のリサイクル企業Mastermelt Ltdと共同で、食塩電解プロセスに使用されるセルおよび電極に含まれる貴金属のリサイクルに関する実証プロジェクトを開始しました。

食塩電解装置に使用される電極には、イリジウムやルテニウムなどの希少なプラチナ族金属(PGM)が使用されています。これらは調達が困難で価格変動が激しく、加えて電池、電子部品、水素製造分野(特にPEM型水電解装置)での需要増により、安定供給が世界的な課題となっています。

このような状況を受け、クロールアルカリ業界における貴金属の効率的な再利用と、循環型エコシステムの確立を目指して本取り組みが始動しました。

この実証プロジェクトでは、まずオランダのNobianから耐用年数を迎えた使用済みの電極を旭化成が回収します。次に、その回収された電極に対して、英国のMastermeltおよび日本のフルヤ金属が共同で処理を行い、電極表面に塗布されていた触媒を剥離し、剥離物を加工します。その後、得られた触媒剥離物からイリジウムやルテニウムといった貴金属を抽出し、高純度化を図ります。

こうして精製された貴金属は、再び旭化成により原料として使用され、新たに触媒を塗布した「リサイクル触媒電極」が製造されます。最終的に、Nobianはこのリサイクル電極を使用して食塩電解を行い、苛性ソーダと塩素を再び製造することで、資源の循環的な利用が実現されます。

このように、4社が連携することで、使用済み電極から貴金属を効率的に回収し、それを再利用するリサイクルプロセスが体系的に構築されています。

この一連のプロセスにより、資源の循環と安定供給が可能となり、クロールアルカリ業界全体の持続可能性に貢献します。

本モデルは、単にエンドユーザーと供給者の間で完結するものではなく、クロールアルカリ業界全体に広く展開し、セルおよび電極の安定供給を実現することを目指しています。また、リサイクルされた貴金属の流通過程にトレーサビリティを導入することで、資源の循環性を可視化し、その信頼性を高めるとともに、再生素材の活用を一層促進していきます。さらに、今後は本取り組みをグリーン水素の製造分野にも応用することを視野に入れ、関連する研究開発を進めていく予定です。

 

URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000187.000079452.html