[2025年7月]
欧州委員会(European Commission)は、鉄・アルミニウム・銅などの金属スクラップの輸出入を監視する税関監視システム(Customs Surveillance System)を導入しました。
この措置は、2025年3月19日に採択された「鉄鋼・金属行動計画(Steel and Metal Action Plan: SMAP)」の一環として導入され、EUの金属産業の競争力に影響を与える課題への対応を目的としています。
この計画の柱のひとつは金属の循環性(metal circularity)を推進することであり、これはEUが掲げる2040年までに温室効果ガスの正味排出量を1990年比で90%削減するという気候目標とも整合しています。
現在、EUでは金属スクラップの入手が難しくなっており、その主な要因の一つは第三国へのスクラップ流出、いわゆる「scrap leakage」とされています。
加えて、アメリカが鋼鉄およびアルミ製品(スクラップは除外)に50%の関税を導入したことで、世界的な原材料価格が上昇し、EUからのスクラップ輸出がさらに加速する懸念も高まっています。
このような状況を受けて欧州委員会は、EU域内の金属産業に必要なスクラップへの安定したアクセスを確保するため、輸出入データの構造化された詳細な収集と監視を行う方針を示しました。
この税関監視制度は、スクラップの供給を安定化させ、資源不足を防ぐことにより、EUの金属産業の持続可能性とレジリエンス(回復力)を強化するための手段となります。
さらに、欧州委員会は産業界と連携して、金属スクラップの分類をより精密なカテゴリに細分化する可能性についても検討を進めています。
欧州委員会は2025年第3四半期末までに、さらなる措置が必要かどうかを評価する予定であり、輸出入統計は毎月更新され、透明性の高い貿易情報を提供する計画です。