ニュース

2025年5月21日
北米南米
トランプ米政権、中国への追加関税率の引き下げを発表、協議継続の枠組み設置へ

米国のトランプ政権は5月12日、米国と中国の経済と貿易に関する会談の共同声明を発表した。米国が中国に課している125%に達した相互関税率を引き下げ、他国・地域と同様の10%のベースライン関税を適用する。中国側も同様の措置をとる。今後は、協議継続のための枠組みを設置する。なお、トランプ政権は今回の関税引き下げに関する大統領令も公表した。共同声明によると、中国に対して125%まで引き上げた相互関税率(2025年4月11日記事参照)を廃止し、当初の34%に戻す。その上で、24%の執行を90日間停止し(注1)、ベースライン関税の10%を適用する。ただし、1974年通商法301条に基づく中国原産品への7.5~100%の追加関税や、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくフェンタニルの流入防止を目的とした中国原産品に対する20%の追加関税(2025年3月4日記事参照)、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品(2025年2月17日記事、2025年3月12日記事、2025年3月17日記事参照)や自動車・同部品に対する25%の追加関税(2025年4月3日記事参照)などは維持する。これに対し、中国も米国と同水準の追加関税率とする。中国は、米国原産品への125%の追加関税率を当初の34%に戻した上で(2025年4月14日記事参照)、24%の執行を90日間停止し、追加関税率を10%とする。加えて、4月2日以降に米国に対して講じた非関税措置を停止、または廃止するために必要な行政措置を講じる。米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(5月12日)によれば、これには、レアアースの輸出管理や(2025年4月7日記事参照)、米国企業に対する制裁(2025年4月9日記事参照)などが含まれるようだ(注2)。両国は、これらの措置を5月14日までに実施する。その後、経済・貿易協議を継続するためのメカニズムを設立する。この協議の米国側の代表はスコット・ベッセント財務長官およびジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表で、中国側は何立峰副首相が代表を務める。今回の協議では、フェンタニルの流入防止を目的とした中国原産品に対する20%の追加関税は維持されたが、ホワイトハウスの声明によると、ベッセント氏は「私にとってうれしい驚きだったのは、米国でのフェンタニル危機に対する、中国の関与のレベルの高さだった」とし、グリア氏は「フェンタニル問題について建設的に協力することで合意し、前向きな進展が見られた」と述べている。また、今回の協議の結果、適用されることになった10%のベースライン関税について、トランプ政権が発表したファクトシートでは、米国内生産を促進し、サプライチェーンを強化し、米国の通商政策が米国人労働者を最優先に支援するもの、と述べている。複数ある関税措置の中でも、ベースライン関税は、米国への製造業回帰を目的にしているとの指摘がある。ベッセント氏は政権発足から100日に合わせた声明で、関税、減税、規制緩和は経済成長と米国内製造業の活性化を推進するために相互に連携した政策だと述べている(2025年5月1日記事参照)。(注1)なお、90日間の停止の起点は、米国東部時間5月14日午前0時1分となっている。(注2)米国の対中サプライチェーンの観点からは、レアアースなどに対する中国の輸出管理強化が懸念事項の1つとなっていた(2025年3月19日付地域・分析レポート参照)。(赤平大寿)

https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/05/12b04b95d92569e2.html