パソコンやスマホ、宅配・引っ越し業者が回収 都市鉱山開拓へ実証
環境省は中小の宅配業者や引っ越し業者がパソコンやスマートフォンなどの不用家電を回収する実証事業を7月にも始める。物流大手からの委託で収集できるようにして、希少資源が眠る都市鉱山の開拓を進める。
荷物や家財を運搬中のトラックの空きスペースを活用して回収網を広げる。指定の営業所への持ち込みも受け付ける。回収後は環境省が認定するリサイクル業者に引き渡す。北海道と関東、九州、四国で2027年1月まで実施する。
ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸とサカイ引越センター、球磨村森電力(熊本県球磨村)、認定リサイクル業者のリネットジャパンリサイクル(愛知県大府市)と宮里(沖縄県名護市)をそれぞれ代表とする5つの事業連合が担う。
銅やレアメタル(希少金属)の回収などを狙いとする小型家電リサイクル法で、いまも認定リサイクル業者は大手物流企業に収集を委託できる。中小への再委託は不適切な処理につながるとして禁じている。特例で再委託を認める。
法令はパソコンやスマホ、マッサージ器など計28品目を回収対象と定める。家庭から出る一般廃棄物と、企業などの産業廃棄物のいずれも含む。産廃の運搬には排出企業が適正な事業者に引き渡したことを示す管理票が必要となる。
管理票は宅配・引っ越し業者にとって荷物の伝票とは別に処理する手間が生じるため参入の壁となっていた。実証では物流企業のシステムを使い、小型家電の処理状況を追跡できるかを検証する。
回収対象の品目を絞り、トラックの改装コストなども抑える。今回は換金価値の高い希少金属などを含むパソコンやスマホだけを回収する。リサイクル業者や物流会社が回収した家電を運ぶトラックへの掲示を求める認定マークも不要とする。
28品目には換金性の乏しいマッサージ器など、リサイクル業者の収益にならずコストだけが生じるものも含む。認定事業は金銭的な価値が生じやすい品目と乏しい品目の合算で成り立つ仕組みをうたう。マークは金目の品目だけを回収する事業者の横行を防ぐ狙いがある。
環境省は25年度補正予算で確保したおよそ4500万円を使い、人件費や追跡データなどの分析経費を支援する。実証結果をもとに、27年度以降に小型家電リサイクル法を改正するかどうかを検討する。
回収は停滞している。環境省は20年度、23年度までに年14万トンとの目標を掲げた。23年度実績はおよそ9万トンで前年度から3%減った。24年度もほぼ横ばいだ。
家庭の小型家電は主に回収ボックスや家電量販店への持ち込みを通じ、自治体が集めて認定リサイクル事業者に回る。産廃は認定業者が直接引き受けるケースが多い。
家電量販店は売り場面積などの制約で、収益が生じやすいパソコンなどを中心に回収する。処理コストの高い品目は集まりにくい。未認定のリサイクル事業者が金目の産廃を抜き取り、希少金属の売却後にゴミを不法投棄するケースもある。
環境省の担当者は「不用品を回収する業者の増加で換金性の高いパソコンなどが認定業者に回りにくくなっている。自治体の廃棄物処理の費用が増えている」と話す。実証は回収品目を絞ることで収益に与える影響も検証する。
実証事業での処理ルートの追跡は資源の不適正な海外流出を防ぐ狙いもある。環境省によると、23年度はおよそ50万トンの廃小型家電の1割ほどが輸出業者に渡った。都市鉱山の回収網が広がれば、経済安全保障リスクの抑制にもつながる。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2121U0R20C26A6000000/
