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眠らせ、水なし…技術が進化 活魚輸送、消費増へあの手この手

生きたまま魚を運ぶ技術が進化している。魚を眠らせたり、水を使わない容器を開発したり、あの手この手で輸送する効率を向上させている。新鮮で見た目も華やかな活魚は高値で取引されるため、水産業の活性化につながるとの期待が高まる。

アジやハモを二酸化炭素で眠らせて輸送時の負担を減らし、生きを保つ-。建設資材レンタル会社の日建リース工業(東京)は昨年、約1200リットルの水槽やポンプ、バッテリーを備えた「日建魚活ボックス」を開発した。これを卸売りの仙台水産(仙台市)が今年からグループ内で導入し、宮城県石巻市の漁港に水揚げされた魚を仙台市中央卸売市場に運んでいる。

活魚は専用車による大量輸送が主流だが、ボックスを使えば一般のトラックや貨物列車で他の荷物と混載した状態で、少量でも東京などの消費地に届けられる。

「2020年東京五輪・パラリンピック後の建設関連市場の縮小も見越し、新事業の開拓は急務だった」。日建リース工業の大森道生事業開発部長は水産関連の事業に参入した狙いを説明する。

積水化成品工業が宮城大と共同で開発したのは発泡スチロールの容器「水なし活ヒラメ輸送魚函」だ。ヒラメを低温で冬眠状態にして水を使わず運ぶ。運搬費を抑えられることが利点で、水産物のブランド化などに伴って高まる小口輸送の需要にも対応した。養殖業者と組んで実験を重ねており、将来は輸出での活用も目指す。

産地発の動きも進む。高知県室戸市の漁師、松尾拓哉さんはキンメダイやアカムツの活魚での流通を目指し、3月に東京へ試験的に運んだ。取った魚を漁船に置いた水槽に入れるなど、工夫を重ねた。沖縄県はヤイトハタの水なし輸送を実現し、同県伊平屋村の漁協が活用している。

16年度の1人当たりの魚介類消費量は24.6キロで、ピークの01年度から4割近くも減っている。一方で17年度の東京都中央卸売市場の活魚取扱高は約215億円で、ここ10年は増加傾向にある。活魚流通の裾野を広げれば、消費が一段と増加する可能性がある。

活魚販売を手掛ける東京都東村山市の「ふぃっしゅいんてりあ」は、安価で設置できる簡易ないけす「魚樽ふぃっしゅ」の導入を飲食店に提案している。林剛生社長は「網にかかった魚を生かした状態で管理して届けるには手間が掛かる」とし、流通を活発化させるには漁業者の協力も必要と指摘した。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/180822/mca1808220500011-n1.htm