2025年7月17日にPlansee Groupが発表した記事によると、タングステンは非常に高密度で、金属中で最も高い融点を持つ元素であり、ハイテク産業に欠かせない素材です。
しかし、世界の既知のタングステン埋蔵量の最大90%が中国とロシアに集中しているため、安定的な供給確保には戦略的対応が必要です。
Plansee Groupは、この供給リスクに対応するために以下の3つの柱を中心とした戦略を展開しています。
-タングステンスクラップの回収と再利用
タングステンは無限にリサイクル可能な資源であり、Planseeは使用済み製品や生産廃棄物からタングステンを回収し再利用しています。
顧客との買い戻し契約や体系的な回収・選別システムによってこれを進めています。2018年には、ヨーロッパ最大のタングステンスクラップ商社であるStadlerを買収しました。
”再生資源を1kgでも使うことで、天然資源の節約とカーボンフットプリントの改善につながる”、とKarlheinz Wex委員長は述べています。
-リサイクル技術の開発と最適化
Plansee Groupは数十年にわたりタングステンリサイクル技術の開発に取り組んできました。主に次の2つのプロセスに焦点を当てています:
熱機械的リサイクル:選別されたスクラップを多段処理し、そのまま成形可能なタングステン粉末を生成。
化学的リサイクル:タングステン含有のスクラップを金属タングステンやタングステンカーバイドに変換。この再生タングステンは、鉱山から採掘されたものと同等の品質を有します。このプロセスは、同社の子会社Global Tungsten & Powdersによって実施されます。
-鉱山との長期購入契約(Offtake Agreements)
Planseeは中央アメリカやイベリア半島のタングステン鉱山と供給契約を結ぶとともに、韓国の上東(Sangdong)鉱山が2026年に再稼働予定であることから重要な供給源として期待されています。
PlanseeはAlmonty Industriesの上東鉱山に14%の出資をしており、長期的な購入契約によって鉱山生産の大部分を確保しています。Global Tungsten & Powdersがこれを高品質な製品へ加工します。
Karlheinz Wexは、“タングステンスクラップのリサイクルと鉱山との長期契約のおかげで、我々はタングステン粉末、半製品、カーバイド工具・部品まで、安定かつ独立した供給を顧客に提供できます。
顧客は安心してプロジェクトに集中できます。我々は主要経済地域全体にわたって、安定的かつ持続可能な原材料供給を保証します。”と述べています。
【Plansee Groupについて】
オーストリアのプランゼー・グループ(Plansee Group)は、タングステンやモリブデンなどの高融点金属を専門とするハイテク素材メーカーです。
主に航空宇宙、医療、半導体など、高い性能が求められる分野に製品を供給しています。
同社の主要な事業戦略は、鉱山との長期購入契約と、自社で開発したスクラップリサイクル技術を組み合わせることで、原材料の安定供給を確保することに重点を置いています。
スクラップリサイクル戦略は重要な柱となっています。タングステンスクラップの回収と自社開発の再利用技術を通じて、原料への依存度を減らし、資源の循環性を強化しています。
この戦略の一環として、ヨーロッパ最大のタングステンスクラップ商社であるスタッドラー(Stadler)社の買収も行われました。